鈴本ヤンデレ研究所

ヤンデレ童話とかレビューとか

10億のアレ。【レビュー】

 

『10億のアレ。』2巻まで読んできました。

電子コミック大賞を受賞した話題作。吉原を題材とした斬新な設定で、買おうか迷っている方も多いのではないでしょうか?

ヤンデレ作品ではありませんがレビューしていきますね。

 

【総評】

★☆☆☆☆

 

辛口コメントです。作品が好きな方にはおすすめできません。

 

 

 

吉原、花魁、遊郭、廓言葉。

実にアングラでほの暗く美しい、よい響きですね。

筆者は吉原が大好きです。

花魁。花魁道中を堂々と歩き、富と権力を持て余した男を『振る』ことすら許された、吉原の華である高級娼婦。

身請け。金持ちの男に見初められ、吉原を出て女としての幸せを手にする、遊女の一縷の希望。

その陰に隠れて二束三文で体を売る下級娼婦。今日を生き延びても明日に梅毒で命を落とすこともある、想像を絶する過酷な世界。

そんな世界が実在したなんて現代では信じられませんが、フィクションの世界なら話は別。

 

『もし、現代の日本に吉原があったら?』

 

そんな夢物語を叶えてくれたのが、今回レビューする『10億のアレ。〜吉原いちの花魁〜』です。

 

現代に『吉原』が復活――。現代版・吉原では、芸能界で華やかに活躍する人気女優が夜は遊女となり疑似恋愛と体を売る。そこへ一人の美少女・明日風が育ての親の借金を返済する為、吉原に売りに出される。明日風は吉原がどういう所なのか何も知らなかったが、偶然、遊女が男に体を売っている場面に遭遇。自分がここで男に消費されるのだと知り、逃げ出そうとするものの客の男につかまってしまい…!?

Amazon公式書籍ページhttps://amzn.asia/d/f3QlFzhより引用)

 

公式のあらすじからもう面白いですよね。

 

現吉原。

財界のお偉方が結集して、金と権力に物言わせ、反対運動や法律の問題を片っ端から押し切って、華やかな江戸の吉原を復活させました。(一体何に全力を出してるんだ)

 

主人公の明日風(源氏名:アザミ)は物語の冒頭から全裸でミラーボックスに入れられます。

育ての親の借金のカタと称して、何も知らずに売られたのです。

マジックミラーになっていて、鏡の向こうでは、現吉原で遊郭を運営しているお偉方が、明日風の商品価値を品定めしていました。

 

落札価格、なんと10億円

世紀の美少女で上玉(+処女)とはいえ、19歳の一般女性に10億円

ちょっと信じ難い金額です。

 

落札した『花扇』の社長はもちろん、アザミが未来の吉原のNo.1遊女──花魁になってくれることを期待しています。

社長は語ります。

 

「あの男嫌いの目に、財界の化け物達が食い付かないワケがない」

 

明日風は女子高生時代、男性教師に性的暴行未遂を受けたことで、男性恐怖症になりました。

『私に女を見る目が怖い』

ノローグでそう語るアザミは、それでも花魁になることができるのか──。

 

 

そんなお話です。

めっちゃ面白そうじゃありませんか?

 

ですが残念、期待はずれでした。

 

タイトルが完全に出オチです。
吉原や花魁が好きで買いましたが、夜の世界の妖艶さも薄汚さも、リアリティもありません。
わかりやすく期待はずれでした。

花魁候補だという主人公の言動に色気が全く感じられず、花魁の格に見えないし、男も女もやってることはただの風俗なので、遊郭作品としての見所がありません。

成人向け漫画としては内容が薄っぺらく、大衆向け漫画としてはテーマが過激で人を選ぶ。
どっちつかずで中途半端です。
大人にも学生にもおすすめできない。

 

 

……私もこんなことを言いたくなかった。

もっと純粋に現代日本で吉原の世界観を楽しみたかった……。

 

 

 

①アザミが10億の女と思えないほどしょーもない

 

花魁に必要な要素として、作中でも教養が挙げられます。

現代の一流のホストクラブの女性もそうですよね。各界の要人を相手取るのですから、経済や社会情勢、数学に至るまで、幅広い知識が求められます。

教養には品があることも含まれます。

顔がいいのは当たり前。容姿端麗で賢く、礼節やマナーがなっている『最高に美しい女性』だからこそ、一流の男性が、わざわざ高い金を払ってでも相手をしてほしがるのです。

 

アザミは品がなく、礼節やマナーもなっていない。

シンプルに非常識で性格が悪い。

 

遊女として正式にデビューするのアザミの信じ難い振る舞いは、枚挙にいとまがありません。

 

  • 店1番の太客であるイケメン若社長の糀谷(こうじや)に出会って数分で一目惚れ。他の男性を蔑ろにしたり浮かれてミスを連発したり、色恋で仕事に支障をきたす
  • 店のスタッフに奢ってもらった特上うな重おにぎりを素手で鷲掴みにして犬のようにガツガツと食う
  • 嫌よ嫌よも好きのうちが理解できず、理解するために「あなたセックスの時に嫌がる女の人に無理矢理迫るの好きですか?」と男性客にセクハラ質問を連発
  • (スタッフの三倉にも平気でこのセクハラ質問をする)
  • 太客のおじ様に肩を触られそうになっただけで体で避けて露骨に嫌がる。凍りついた空気を直そうともせずスタッフにフォローさせる
  • 先輩遊女、葵の座敷に急きょ派遣された際、大得意の中条様に「ウッザ……」と舌打ちして死ぬほど怒らせる
  • 翌日、葵の客につくことになった際、一目惚れした糀谷様の誘いに浮かれて仕事をサボって2人きりの会話を楽しむ

 

これだけでもう、

アザミ絶対遊女向いてないよね

としか思えません。

 

仕事でミスするのはまだしも、そのアフターケアは全て周りの人間が行っています。

大得意の中条様を死ぬほど怒らせて叱られた時は「インフルエンザにも困ったものですね」と平気で人手不足のせいにします。

 

ちょっと整理しますね。

 

  • 自分のミスをすぐ他人や環境のせいにする。
  • 上司に素直に謝罪せず、拗ねる。
  • お得意様に何度も無礼を働く。
  • 反省しない。
  • 好きな男のためなら平気で仕事をサボる。
  • そのくせ、なぜか上層部のお気に入りで、あなたより出世を期待されている。

 

ムカつく部下ですね。

本当に関わり合いたくないです。

 

花魁の最有力候補だそうですが、遊女以前に、人としてどうかと思います。

まともな両親の元で育って社会人になっていたとしても、この勤務態度じゃ即刻クビでしょう。

男性恐怖症のくせに惚れた男とのデートのためなら平気で仕事サボりますしね。ヤバいです。

 

にも関わらず、これらのエピソードのあいだあいだに、花扇の社長や重鎮、スタッフなど、様々な人間がアザミを持ち上げます。

 

「10億出した価値はあった」

「俺の目に狂いはなかった」

「10億でも安いくらいだ」

「本格的に化け出したな」

 

周りが持ち上げれば持ち上げるほど、アザミのしょーもなさが浮き彫りになります。

なんなら持ち上げてる側までしょーもなく見えてきます。

 

1番アザミ無いなとなったのは、1巻から2巻にかけての山吹花魁のエピソードです。

山吹(やまぶき)は現吉原の頂点に君臨する花魁です。現役女優の妖艶な美人。優雅で気品があり、床上手で男の扱い方もうまいという、まさに完璧な花魁

アザミの属する遊郭『花扇』の中でも、山吹花魁は別格です。

現吉原中の誰もが憧れる理想の花魁。

そんな山吹花魁の1番の太客が、アザミが(分不相応にも)恋焦がれている糀谷です

 

しかし、糀谷には裏の顔がありました。

厳しい母親にしつけられた糀谷は大の女嫌い。

金に物を言わせ、プライドの高い山吹花魁を足の下に敷くことを至上の喜びとする最低のゲス野郎だったのです。

 

アザミは、水揚げ(遊女が客に初めて抱かれ、正式に遊郭デビューすること)を糀谷にされることになります。

その床の最中、糀谷はゲスな本性を表し、

「アザミを傷モノにして無理やりにでも身請けして、一生自分のオモチャにする」

という鳥肌ものの宣言と共に、暴行未遂を受けます。

 

唯一、糀谷の本性を知っていた山吹花魁は必死に「アザミを糀谷に水揚げさせてはいけない」と訴えました。

訴えが通じ、男性スタッフの三倉が慌てて駆けつけた時。

アザミがクシで糀谷を返り討ちにし、顔をグーで殴り飛ばしていました。

 

ここまでは正当防衛でしょう。

問題なのはそのあとです。

 

糀谷がしつこく「アザミを身請けしたい」と、花扇の社長たちに訴えます。

アザミを身請けしてオモチャにするためなら、「20億出す」とまで言ったのです。

心が揺らぐ社長。この身請け交渉の場になぜか同席していたアザミは、糀谷にこう言ってのけます。

 

「いくら積まれてもあなたの元には行きません」

「20億ごとき、(身請けされずとも自力で稼ぐのは)朝飯前だって言ってるんです」

 

これだけならかっこいいセリフですね。

しかしアザミはこう続けます。

 

「母親への恨みの八つ当たりに、花魁や私をいたぶって満足しているかわいそうな人」

「あなたのやってることは弱いものいじめをする子どもと同じ

「たとえ私を身請けしたとしても、あなたが自身の弱さと向き合わない限り心は一生晴れない

「わかったら即刻吉原から出てってください

 

いやいや、何様なの?

明らかに言い過ぎだよね?

 

最低のゲス野郎だったとはいえ、仮にも今までお店に大金を落としてくださったVIPのお客様ですよ?

社長やら大人が揃ってる前で、どんだけ恥かかせたら気が済むんですか?

過去のトラウマ抉ってまで執拗に言葉の暴力で畳みかけて、人格否定して。

いじめてるのはあんたの方だろ。

 

身請けを丁重に断ればいいだけの話です。

糀谷の地雷を踏み抜き、神経を逆撫でする必要はどこにあるのでしょうか?

暴行未遂されたのを盾に正論でボコボコにして憂さ晴らししたようにしか見えません。

 

ちょっと言い過ぎた気がしなくもないですが。

アザミの暴挙のしわ寄せがすべて山吹花魁にくるのが、腹立たしい。

山吹花魁は、両親が次々に作る借金に加えて、スポーツ選手を目指す妹のために、大金が必要だったのです。

だからこそ糀谷の行いを今まで甘んじて受け入れていたというのに、助けてあげたアザミに1番の馴染みを奪われた挙げ句、妹へのスポンサーも打ち切られました。

 

山吹花魁がかわいそう。

彼女が1番の被害者ですよ。

 

新米以下のアザミはノーダメージで、今まで花魁として店に貢献し続け、努力を惜しまず頑張ってきた山吹花魁がこの仕打ち。

本当に胸糞悪い話でしかないです。

 

こんなしょーもない女が10億で買われた花魁候補。

山吹花魁との一件があった後も、周りから未来の花魁として期待され、丁重に扱われ、一切のお咎めなし。

設定に無理がありすぎます。

 

一体誰が、大金を払ってまで、こんな高慢ちきで口だけ達者な女と疑似恋愛を楽しみたいと思うのでしょうか。

加えて床上手どころか、第2の水揚げの相手客とのセックスまで夜通し拒否するような女です。

今のうちに遊女を辞めさせた方が絶対に店のためだと思います。

 

アザミは糀谷との一件があったあとは、男性スタッフの三倉に優しくされて、あっさり鞍替えします。

山吹花魁への無礼はちょっと反省したあとすっかり忘れ、アザミと三倉のラブストーリーが始まります。その前に山吹花魁への資金繰りを考えろよ。

 

アザミが終始こんな調子なので、吉原の疑似恋愛どころではありません。

主人公がウザい……

要所要所でそう感じてしまい、純粋に楽しめませんでした。

 

山吹花魁の話はどっか行って、2巻でアフターケアが語られることがなかったので、本当に可哀想だと思います。

花扇辞めた方がいいですよ、山吹花魁。

 

 

②世界観にリアリティの欠片もない

 

アザミの人間性に難があるのはお話した通りですが、話が続くにつれて、現吉原の設定にも無理が生じてきます

 

初めにお話した、

 

現吉原。

財界のお偉方が結集して、金と権力に物言わせ、反対運動や法律の問題を片っ端から押し切って、華やかな江戸の吉原を復活させました。

 

ここまでは冒頭できちんと提示されている以上、全く問題ないと思います。

フィクションなので、多少無茶な設定でも、面白ければ許容範囲です。

 

だんだん『多少無茶な設定』なんて可愛いものでは済まなくなってきます。

大分無理がある設定になる。

 

日本終わってるなレベルになります。

 

ストーリーはアザミと三倉という男性スタッフとの恋愛ものになっていくわけですが、

三倉の過去話を聞く度に「ん?」と首を傾げました。

 

三倉は過去に、片想いしていた汐織(しおり)という遊女を吉原から逃がそうとしました。

汐織が愛していた馴染み客に会いたいと言って泣いたからです。

クルーザーの荷物に汐織を紛れ込ませ、外での汐織の幸せを願います。

しかし数日後、汐織の番号でかかってきた電話で知らない男の声で告げられたのは、「汐織は死んだ」という報せでした。

電話の相手は、現吉原から逃げた遊女専門の『捜索隊』でした。

その後、吉原の捜索隊は三倉を拉致。吉原の本部に引き渡された三倉は、拷問と尋問を受けます。

捜索隊によると、汐織の馴染み客はすでに他の女と婚約しており、汐織はその結婚式を見届けた後に自殺

汐織には多額の借金が残っていました。

拷問されたものの運良く生き延びた三倉は、汐織の代わりに借金を返済するため、今も現吉原で働いているのでした。

ちなみに三倉は眼帯キャラなのですが、この時に右目を抉られたそうです。

 

現代日本じゃないですよね。

どこのマフィアの話ですか?

 

なんだこの無駄に物騒な設定は……少なくともヤクザは関わってますよね。

しかも、三倉と汐織のエピソードがあまりに陳腐

江戸時代の吉原でも足抜け=脱走を試みた遊女は厳しい罰を受け、殺されることもあるというのは有名な話。ちょっと吉原が好きな一般人なら誰でも思いつくか、どこかで聞いたことがある話です。

明らかに江戸時代の吉原のオマージュで、もはや現代日本である必要がありません。

 

大体、設定に無理がありすぎます。

 

多額の借金を抱えて逃げた遊女を専門に探す捜索隊がいる

→???

 

現吉原運営だけでも死ぬほど金がかかってそうなのに、そんな予算がどこにあるのでしょうか

多額の借金を抱えて逃げ出す女性がまともな暮らしをできるとは思えないので、普通に警察が保護すると思うのですが……警察が保護して吉原に送り届けた方が、治安的にもコスパ的にもよさそうです。

現吉原自体は国が再興させたそうですけど、さすがに血税を使ってこんな部隊を立ち上げられませんよね。

民間企業だとしたら、どこの企業が、なんの目的で、こんなグレーなことをやりたがるのでしょうか。捕まるリスクにリターンが見合っているとは思えない。

指定暴力団だとしたら、現吉原本部と捜索隊が繋がってるのって、かなりヤバくないですか……。

 

三倉は拉致され拷問、尋問。右目を抉られる

→怖いです。

 

たかが1人の風俗嬢を逃がした程度で拉致・拷問されるのが当たり前の世界なんてホラーです。

きらびやかな吉原の夢に浸れません。

拉致に拷問に暴力、やりたい放題ですね。現吉原には警察のメスは入らないのですか?

それすらも『お偉方が金と権力で黙らせる』んですか?金と権力にも限界と節度があるでしょうに……。

ヤクザが関わってるとしか思えないこんなヤバい場所に足しげく通う男たちの気が知れません。

いつ抗争に巻き込まれてもおかしくない、驚きの治安の悪さです。

 

漫画だから多少のファンタジーは許されるにしても、ここまで突っ込みどころ満載だと、作品に没入できません。

日本の真ん中に『現吉原』という異世界が生えてきたような凄まじい違和感。

仮にも現代版吉原を売りにしている作品なのですから、もっとリアリティを大事にしてほしかったです。

 

 

 

③ただの売春漫画で内容が不適切

書くか迷ったのですが、電子コミック大賞の受賞作ということであえて言います。

電子書籍で簡単に若い人が手にとれる作品として、あまりに時代錯誤で不適切な描写が多いと感じました。

  • 若い女性の人身売買、売春が合法な世界
  • 堂々とセックスの絵が大コマで描かれる
  • 現代版吉原と謳って、風俗街が華やかで素敵な場所として描かれている

ホストの売り掛けはご存知かと思います。

売り掛けとは、ホストの客が遊んだお金をツケにする=ホストに借金をすることです。

売り掛けで法外な借金を背負わされ、売春を余儀なくされる若い女性がたくさんいます。

キャバクラの執拗な客引きが問題視され、逮捕が相次いでいます。

2023年12月現在、風俗街に関する様々な問題が浮き彫りとなり、ニュースで社会問題になっています。

 

少なくとも、電子コミック大賞受賞!なんて堂々と未成年におすすめできる内容ではありません。

明らかに人を選ぶ作品であり、人によってはかなり不快になる題材です。

 

『10億のアレ。〜吉原いちの花魁〜』

 

いくら現代版吉原、花魁、10億の女という言葉でごまかしたところで、

現吉原は風俗街です。

花魁は風俗嬢です。

若い女性が10億もの借金で売春を強要されています。

 

本作はコミカルなギャグを交えつつ、重いテーマを暗くなりすぎず扱っている点は、かなり秀逸だと思います。

ですが、風俗というセンシティブな内容を取り扱っているという意識があまりに薄い。

 

筆者は本作の絵柄が大好きです。表紙も美麗で、思わず手に取ってしまいたくなる魅力があります。

だからこそ、何も知らない若い人が本作を手に取り、現吉原や花魁に憧れ、軽い気持ちで夜の世界に足を踏み入れる……

そんなことは、絶対にあってはならないと思います。

 

電子コミック大賞受賞!と、大々的に宣伝するのは明らかにやり過ぎです。

人気マンガ『明日、私は誰かのカノジョ』の影響で、ホス狂に憧れる女性が増えたという話もあります。

フィクション作品の影響力をメディアが舐めてはいけません。

 

 

 

 

総評:面白くない

  • 主人公のアザミが花魁の格ではない(応援したくなる性格でもない)
  • 世界観にリアリティがなさすぎる(世紀末並の治安の悪さが気になって没入できない)
  • ストーリーも僅か2巻でダレてきた(2巻終了時にアザミが水揚げ=正式な遊女デビューすらしていない)

1巻の糀谷編の勢いや、間に挟まる子気味いいギャグ、綺麗な絵柄は高評価でした。

ですが正直、遊郭作品としての見所はありません。

 

夜の世界を舐めてるとしか思えない小娘が、仕事で失態を繰り返しながら偉そうな口をきき、尻拭いを周りの人間にさせている間に他の男との色恋にうつつを抜かす。

あくまで『現吉原』という架空の世界であり、アザミが世紀の美少女であるという点を考慮しても、花魁になれる逸材とはとても思えません。

遊郭の客との疑似恋愛を楽しみたいのに、見せられるのは男性スタッフとの社内恋愛。

吉原という奇抜な設定がなければ、ただの質の悪いオフィスラブ作品です。オフィスラブや水商売系の漫画なら、他に良作が山のようにあります。

 

成人向け漫画としてはストーリーが薄っぺらく、大衆向け漫画としては内容が不適切。

どっちつかずで中途半端です。

青年漫画だそうですが、男性ウケする内容には感じませんでしたし、女性ウケも微妙すぎます。いったいどの層をターゲットにしているのだろう?と疑問です。

 

物語への期待値が高かったので残念です。

吉原や花魁が好きで、あらすじで面白そう!と期待した方にこそ、この漫画はおすすめできません。