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ハッピーシュガーライフ(1)【ヤンデレビュー】


ハッピーシュガーライフ(1) (ガンガンコミックスJOKER)

ハッピーシュガーライフ(1) (ガンガンコミックスJOKER)

 

 

全体的な評価としては高い部類に入る作品でした。
質の悪いラノベや流行りそうな要素を詰め込んだだけの漫画のように表紙だけ良くて中身がペラペラということもなく、きちんとストーリーのある漫画だと言えます。
生粋のヤンデレクラスタだけでなく、ヤンデレに耐性のある幅広い層にお勧めできる良作です。これを機にヤンデレクラスタが増えたらいいなぁ。

 

さて、いつものように目的もなく本屋をブラブラしていたある日。平積みになっている本=売れ筋の作品ということで平積みの漫画の表紙を物色していると、未来日記の我妻由乃似の狂気的な美少女がこちらを見ているではありませんか。
すぐさま手に取りあらすじを確認。裏表紙の内容とは少し違いますが、大体はこんな感じでした。

松坂さとうには、好きな人がいます。
その人と触れ合うと、とても甘い気持ちになるのです。
きっとこれが「愛」なのね。彼女はそう思いました。
この想いを守るためなら、どんなことも許される。
騙しても犯しても奪っても殺してもいいと思うの。
『カミヨメ』『TARI TARI』の鍵空とみやきが描く、戦慄の純愛サイコホラー。

ガンガンジョーカー公式サイトより引用。http://www.jp.square-enix.com/magazine/joker/series/happysugarlife/

戦慄の純愛サイコホラー……!?ヤンデレクラスタにとって至高の響き。即購入を決めました。


 許されない恋、心から愛する人を監禁する。そのために邪魔な人間を処理。自らの手はいくらでも汚す。


こういう話が大好きなもので、『愛を守るためならどんなことでも許される』というフレーズに心惹かれました。帯で『賭ケグルイ』の作者である河本ほむら氏・尚村透氏が推薦していたのも大きかったですね。

 

さて、第1巻の中身はこんな感じでした。

 主人公の松坂さとうは、成績優秀で性格も優しいと評判の美少女です。高校生のさとうは、最近家に帰るのが楽しみで仕方ありません。何故なら、神戸しおというこれまた可愛らしいロリ……少女がお出迎えしてくれるからです。
 実はしおちゃんは、さとうが誘拐・軟禁している子供なのでした。さとうは愛してやまない彼女と二人暮らし中。純粋無垢なしおちゃんは、優しくて何でもできるさとうに懐いています。
 ちなみに今二人が暮らしているお家はある人間をさとうが殺して手に入れたものなのですが、そんなことは些末な事情。
 さとうは今の幸せな甘い生活を壊さないために、バイトや証拠隠滅に精を出すのでした。

 

良い点①:タイトルやモノローグのセンスが良い


ハッピーシュガーライフ』というタイトルは、さとうとしおちゃんの幸せで甘々な生活を表しています。ですがその実態は、独善的な理由で幼女を誘拐し、罪無き人を殺すことで手に入れた歪んだ幸せです。それでもさとうは、自らの胸に生まれた甘い想いこそ至高の幸せだと信じ、今の生活を守るためなら文字通り「どんなことでも」しようと決意しています。第1巻でも、主に2人ほどの大人を相手に上手く立ち回り、ハッピーシュガーライフを守ることに成功しています。
甘いだけではない、歪んだ幸せーーそんな意味が込められているように感じます。世間で言う幸せとは程遠いヤンデレ作品にあえてのこのタイトル。秀逸です。
また先ほど引用したあらすじのような、ポエム的なモノローグが随所に入ります。可愛らしい絵柄も相まって、まるで絵本を読んでいるかのような気分になります。ストーリーより雰囲気で漫画を読むタイプの人にも気に入ってもらえる要素があると言えます。

 

良い点②:さとうがテンプレ可愛い


ヤンデレ作品において大抵のヤンデレは優等生かつ美少女なので、テンプレートを遵守している点は高評価です。
また愛する人と一緒に暮らすためなら犯罪も厭わないその姿勢が非常にヤンデレらしくて読者(ヤンデレクラスタ)の心を掴みます。
あと元ビッt……誰とでも寝るような子だったという設定が個人的にツボです

 

良い点③:しおちゃんも非テンプレながら可愛い


ヤンデレのお相手は冴えない平凡な男子と相場が決まっています。しかしさとうはそんじょそこらのヤンデレとは違い、きちんと見る目があるようですね。純粋無垢で聞き分けのいい幼女を愛しています。
この点において、ヤンデレに耐性のある百合好きやロリコンの皆様にも推せる作品ですね。もちろん「推しのヤンデレちゃんは可愛いのになんでそんな男がいいんだ!!私の方が幸せにできるのに!!」と毎度血の涙を流している貴方にもお勧めです。

 

良い点④:美麗な絵柄


表紙買いしたものの中の絵が微妙ということもなく、一つ一つのコマが丁寧に可愛らしく描かれている点が良かったです。何よりキャラクターの病んだ表情が堪りませんね。ゾクゾクします。

 

以上の文章からお分かりいただけるかと思いますが、普通に良作です。1巻の時点では劇的な展開があるわけではありませんが、キャラクターも可愛いしストーリーもちゃんとしています。さとうの心情にも共感できる部分がいくつかあり、非倫理的な行動をしている主人公も心ある人間としてきちんと描かれています。

 

ですが、物足りない……どうにも物足りないんです!!
もっとさとうは病んでていいし、他のキャラクターも魅力的であるべきだと思うんです!!

 

……展開に物足りなさを感じるのは、この漫画が少年誌に掲載されているということが大きそうです。一般的に少女の方が少年よりも鬱展開に耐性があると言われており、実際に少女漫画ってえげつない展開のものが多いです。少年誌の王者と言える週刊少年ジャンプの理念が『友情・努力・勝利』であるのに対し、少女漫画はエログロイジメ泥沼の三角関係と何でもあり。下ネタだって下手したら少年漫画のそれよりひどいです。
以上からもわかるように、男性……特に少年は、ただただ胸が苦しくなり鬱々しい気分になるような暗いストーリーは避ける傾向にあります。よってハッピーシュガーライフも、暗い題材を扱っていながら気分はそれほど落ち込まないようなものにする必要があるのだと思います。
特にガンガンは、血なまぐさいバトルシーンや若干のお色気シーンはあるものの、大抵の作品が非常に健全なものです。それが、私含めヤンデレクラスタには物足りないのかもしれません。
少なくともヤンデレを描くための作品ではないと感じました。


どちらかというと、ちょっと狂った可愛い女の子&異常な両想いシチュエーションを雰囲気で手軽に楽しむ作品って感じです。ヤンデロイドタグ付きのボカロ曲で言えば『ロッテンガールグロテスクロマンス』というよりは『狐ノ嫁入リ』寄りの作品ですね。前者はヤンデレこそ至高!!な視聴者に刺さるのに対し、後者は鏡音リンクラスタや和風曲好きにも広く愛される楽曲です。

ロッテンガールグロテスクロマンス

狐ノ嫁入リ