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鈴本ヤンデレ研究所

ヤンデレ童話とかレビューとか

クズの本懐(1)【レビュー】

ヤンデレビュー

 

 

 ※辛口コメントです。この作品が好きな方はご注意ください。

ヤンデレ作品ではありません

 

 

 

今回紹介する『クズの本懐』。ネットの広告やアニメ化などでよく耳にするタイトルということで、少し気になっていました。
ネット版1話を立ち読みして良さげだったのと、本屋であらすじを見て好みだったので購入。内容はこんな感じです。

安楽岡花火と粟屋麦は、学校の誰もが羨む評判の高校生カップル。 一緒に下校して、テストの点数を教え合い、他愛のない会話をし、物陰に隠れてキスをする。そんな甘酸っぱいカップルの日常を過ごす二人には、誰にも言えない秘密があった――。
恋ってそんなに美しいものですか…? 新鋭が描く、エロティック純愛ストーリー。

ビッグガンガン公式サイトより引用。http://www.jp.square-enix.com/magazine/biggangan/introduction/kuzu/)←このサイトで立ち読み1話が無料で読めます。

 

ふむふむ。切ない恋愛ものなのかな?と思いきや、カップルの『秘密』の内容がぶっ飛んでます。第1話で判明するので言っちゃいますが、花火(♀)も麦(♂)も互いのことなんか毛ほども好きじゃありません。周囲から羨まれる美男美女カップルを演じているだけ。
では何故付き合っているのか。それは、それぞれ別に片想いしている人がいて、相手をその人に重ねて手を繋いだりキスしたりするためです。本編からの引用ですが『互いが互いのかけがえのある恋人』なのですね。
ちなみに花火は近所に住んでいる国語教師(『お兄ちゃん』)に、麦は元家庭教師である音楽教師に片想いしている上、国語教師は音楽教師のことが好きです。彼らの恋が叶う見込みはほとんどありません。

……どうですか、この設定。
めちゃくちゃいいと思いませんか!?切なすぎる!

 

ヒロインである花火のモノローグに、
報われない恋 切ない恋 片想い それってそんなに美しい物ですか 私はそうは思わない
人を好きな気持ちなんて もっと切実でぐちゃぐちゃで 諦めようとしても諦めきれない そういうものだよ
というものがあります。

多くの恋愛漫画がそうであるように、物語における片想いは美しいものとして描かれることがほとんどです。しかし現実の片想いは大抵苦しい。相手の挙動に一喜一憂し、期待しては裏切られての繰り返しです。
片想い中の友人×3(演劇部の衣装担当)も『あたしはゆうれい』のサビを聴きながら「(私なんて)馬鹿です〜!!」と涙ながらにミシンを動かしておりました。

あたしはゆうれい あなたはしらない
涙の理由も その色さえも
それでもきっと 変わらずにずっと
あなたが好きよ 馬鹿みたいね

(『あたしはゆうれい』By米津玄師 http://sp.uta-net.com/search/kashi.php?TID=195154

叶わない想いを募らせている多くの方は、花火のモノローグに共感できるのではないでしょうか。そして、代わりの人間でもいいから寂しさを満たしたいという思いも。
花火と麦は容姿端麗・成績優秀で学校でも人気者ですが、彼らはけして幸せな人間ではないのです。こうした設定が、物語によりリアリティを与えています。

 

では、お待ちかねの本編といきましょう。これだけ素晴らしい設定が散りばめられているのですから、多彩な展開が期待できるはず。
 友人に花火達の関係がバレてしまうのかな?それが片想いの相手にも知られて気まずくなってしまうのかも。
 それとも花火が、ふとした瞬間に麦では先生の代わりにはならないと実感して、苦悩するのかな?付き合い続けても別れても悲しい未来しか見えません。
 もしくは途中で花火を好きになった麦に告白されて罪悪感を抱くのかな?いやいや、むしろ花火が麦に恋することになるのかもしれないですね。

特殊な設定の登場人物が主役になるタイプの物語では、その設定ならではの心情やストーリー展開が期待できますよね。実際私もそうでした。好きな人の代わりに好きでもない人間と付き合うということがどんなことなのか……切ないのか、心地よいのか、虚しいのか。そんなことを考えながら読み進めていました。

 

さて、肝心のストーリーはというと……何も起きません。
本当に、何も、起きないのです。
驚くほど事態が進展しません。少なくとも1巻時点では。
強いていうなら、花火のことを恋愛的な意味で好きな友人(♀)と、麦のことを好きな彼の幼なじみ(♀)が登場しただけです。あとは、なんで花火と麦がこの関係を始めたかっていう経緯が回想シーンと花火のモノローグを交えて紹介されて終わります。
……え、もう終わり?『互いが互いのかけがえのある恋人ですよ』っていうあらすじを超えるものがあったっけ?
これが正直な感想です。
読後に残るものが何一つありませんでした。
これなら設定だけ読んで自分で適当に展開を妄想する方がマシだとすら思いました。
帯以上のものはありません。本当に。

 

①面白い設定に対してストーリーが薄い。


これが普通のちょっと切ない恋愛漫画だったらまだ良かったのでしょうが、いかんせん設定が特殊かつ個人的に好みだったので、ストーリーへの期待値が高かったのがガッカリした原因の一つだと思います。
モノローグで花火の心情が描かれていることは描かれているのですが、描写不足感も否めません。回想シーンの花火は気まぐれとはいえ友人の麦にふざけて抱きついて寂しいと呟くし麦も花火を押し倒して「『お兄ちゃん』だと思ってみれば?」って自ら身代わりになることを申し出るし(花火曰く、多分その時互いが同じことを考えていた、だそうです)、花火は麦のことが好きな幼なじみ(♀)の胸ぐらを掴んで「人のモノにあんまり無許可でひっつかないでね」って言い放つし(花火曰く、独占欲ではなく『所有欲』だそうです)。
結局こいつらは何がしたいの?と何度も思いました。互いのことは好きでも何でもないんじゃなかったのかと。もう互いのこと好きになっちゃえば解決じゃないかとさえ思いました。片想いの相手に対する気持ちがとても本気とは思えません。

 

②キャラクターに共感できない。


花火の性格が悪い意味でクズで、麦のキャラは薄くて空気。キャラクターの心情が命となってくる恋愛ものにおいて、主人公達に愛着を持てない・共感できないというのはかなり痛いと思います。
花火については、男子からの告白の返事を一週間も待たせておいて(なんで私すぐに振らなかったんだろう、面倒くさいなぁ)と思いながら「ごめんなさい」と笑顔で一蹴。それだけならまだいいのですが、「一週間も待ったのに……期待するじゃん……」と泣きそうな相手を前にして、
興味のない人から向けられる好意ほど気持ちの悪いものってないでしょう?
と無表情で言い放つ。いや思っても言う必要ある?
言葉は悪いですが、冷たくてクズな自分に酔っているとしか思えませんでした。本気なのであれば、彼女に人のしての良心はないのだと思います。
普通の人間であればそもそも告白されて待たせていることを忘れるなんて有り得ませんし、忘れてたとしても一週間も待たせたことへの申し訳なさだってあるはずです。なのにまるで自分が正しいとでも言うかのような逆ギレ発言。しかも悪役ではなく、読者に共感されるべき主人公の発言です。


更に、花火のことが好きな男子がその様子を見ていたのですが、彼の友人に「心優しいなぁ安楽岡さん……未練の残らないようあえてハッキリと……さすが俺のミューズ……♡」「フラれるのは嫌だけど俺もあの蔑んだ目で見下されたい……」と恍惚の表情で言っています。さすがにこれには友人からのツッコミが入りましたが、作中で誰も花火の行為を明確に悪であると指摘していない、むしろ正当であるかのように描写されている点に違和感しかないです。
倫理的に悪であることを、物語の中で否定されていない。主人公マンセーとでも言うべき展開に呆れました。

タイトルの「クズ」というのはあくまで、悪いことだとわかっているけど割り切れない身代わり恋愛行為についての言及だからこそ「クズだなぁ」と言いながらも愛せるわけであって、本物のクズなんて誰も好きになりません。こんな人間の恋なんて叶おうが叶うまいがどーでもいいし、むしろ叶うわけないよねって思います。

そもそも他人の恋愛感情を否定してコケにしておいて「お兄ちゃんへのけして叶わない恋……辛い……」なんて言ってても同情できません。そりゃ『お兄ちゃん』だってあなたみたいな性格悪い人選ばないよね、賢明な判断だよとしか。


そして読んでいる限り、モテモテの花火は告白されても毎回バッサリ振っているようなのですが、こんな振り方をしている人間が未だモテモテでかつ誰もが羨むカップルの女側というのがどう考えても納得できません。美人だからこそすぐに「顔だけの女、性格は最悪。麦は見る目がない」なんて噂が立ってもおかしくなさそうなのですが……この辺りの設定に無理があるように感じます。
花火を好きな友人(♀)や麦を好きで花火をライバル視する幼なじみ(♀)の存在も、花火がいかに価値ある少女かということを表すための道具にしか見えません。彼女達に人間としての魅力は特に感じませんでした。麦は優柔不断でよくわからない男という印象しかないです。

 


2巻以降は読んでいないので展開はわかりませんが、恐らく買わないと思います。
もっと花火が良い子で麦もかっこよくて彼らの心情に共感できる場面があって、かつ花火の異常な持ち上げがなければ、続きを買う気になっていたかもしれません。
何度でも言いますが、あらすじの内容はめちゃくちゃ好みでした。ですが、それ以上のものはありません。

 

 

 

支配されたい。自称S以外に。

ヤンデレ以外

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こういうシチュエーションよくないですか!? 共感してくれる方はいらっしゃいませんか!?

そんな気持ちで書いてみました。




ではさっそく。
少し変わった趣味を私は持っていて、細かいんですが心から尊敬できる男性(女性)に弱みを握られ、それをネタに脅され、支配されるシチュエーションにドキドキします。きゃー。



ただし相手は「心から尊敬できる男性」限定です。

勘違い自称ドS男とはヤンデレと刃物振り回し基地外女ほどの隔たりがあります。誤解のなきよう。





さて今回は、心から(ryと自称(ryの違いがいまいちわからない方のために、こんなシチュエーションで考えてみます。


リアルであなたを知っている先輩に、自身が運営しているブログの管理人(もしくはツイッターアカウントなど)の正体を知られてしまう。

あなたを呼び出し「これって○○だよね?」と訊く先輩。青ざめるあなた。「ヤンデレとか好きなんだ。しかもこんな趣味まで暴露してるし。意外だな」などと追い打ちをかけられ、黙って俯くことしかできない。



さてこの後の展開、勘違い自称ドS男が相手の場合はこうなります。


自称「これ、同じサークルの人にバレたら○○どうなるんだろうね? きっと変態って罵られて、友達からも避けられることになるだろうな〜」

女「そ、そんな……困ります」

自称「(ニヤニヤ)黙っててほしい?」

女「は、はい。お願いです……」

自称「そうか。でももちろん、タダっていうわけにはいかない……よな?(暗黒微笑)」

女「わかってます。何でもしますから……」



自称「ふーん。だったらお前……俺の女になれよ(壁ドン)」







(・-・)






(・-・)これ何が面白いんだろう……






なんか自分で書いといて、脚本・演出:勘違い自称ドS男のつまらん芝居に無理やり付き合わされた気分です。
こういう男が少女漫画の中で「今日からお前は俺のペットだ」とかいう薄ら寒い台詞を吐いちゃうんですよ。こんなこと現実世界で言われたら訴訟ものです。男が先輩ならセクハラモラハラパワハラの全てに該当しそうです。

恐ろしいのは、現実の男性でも似たような思考回路を持つ人がいるってことです。「俺Sだから」とか言っちゃうタイプ。
いやサドを自称するだけなら別にいいんですけど「(俺Sだから)命令とかするけど、(俺Sだから、Sのプライドが許さないから)従えよ」って無言の圧力掛けながら脅し(っぽいこと)をされると正直扱いに困ります。こういう人ほどメンタル弱いですし。従わなかったとき面倒くさいし。かといって従ったらつけ上がるし。もう。


声を大にして言いたい。
本当にSなら有無を言わせず相手に従わせてみせろ。


(`・ω・´){俺のペットになれよ(オレカッコイイ‼︎
(´・ω・`*){はい!ペットです!わんわん


なんて言ってても、相手に


(´・ω・`)。。(俺のペットになれよ、なんてノリノリで言っといて断られるとかダサすぎるよね……

(´・ω・`)。。(それに「嫌です」とか言ったら逆ギレされそう……面倒くさい感じに拗ねられそう……

(´・ω・`)。。(……一応言うこときいといた方がいいのかな……なんか可哀想だし……


このように気を遣わせている場合がひっじょおおおおおに多いです。これでは半人前どころかトーシローです。あの本当、止めてください。お願いします。
※少女漫画のヒーローがこれで許されてるのは、ヒロインが彼のそういうところに好意を持っているからです。あと読者のニーズです






脱線しました。私は自称Sさんに説教したいわけではないんです。

相手に気を遣わせるトーシローとは違い、本気で「従わなきゃヤバい」と思わせてくれて且つ普段は心から尊敬できる男性(以下「プロ」と呼びます)の場合を紹介します。
実況付きで。



プロ「せっかくだから、みんなに教えてあげてもいい?」

女「駄目です」

プロ「えー。別によくない?」

女「絶対に黙っててください」

プロ「いや面白いし、みんなも受け入れてくれると思うけどな」

女「私が嫌です。本当にお願いなんで秘密にしてください」




プロはこの辺りで女がわりと本気で嫌がっていることに気づきます
それと同時に、この女のどうしようもない性癖?にも多分気づいています。「ブログの正体をバラされるのは嫌なんだろうけど、他人に無理やり嫌なことをされるっていう状況自体はキライじゃないんだろうな〜」みたいな。




プロ「じゃあみんなに黙ってる代わり、何か奢ってよ。今日の晩飯とか」

女「嫌ですよ。なんでそんなことしないといけないんですか」

プロ「じゃ、言うよ?

女「だから、いくら黙っててもらうからって、晩ご飯なんて奢る義理ないです」




現時点、女はプロを舐めてます。(どうせバラして嫌われる勇気なんてない、自称S男なんでしょ。知ってる)とか思っていますね。あらあら。晩ご飯さえ奢っておけば、恐らくプロは黙ってくれていたはずなのに。
この辺りでプロに動きが出てきます。




プロ(ケータイを弄る

女「……? メールですか?」

プロ「うん、◎◎に送っといたから。ブログのURLと管理人の本名」

女「えっ」

プロ「まああいつなら引かないでしょ」

女(唖然とする)

プロ「だって夕飯奢ってくれないって言うから」

女「い、いやいや……だからって本当にバラしますか?」

プロ「俺ちゃんと言ったよね。黙ってる代わりに晩飯奢ってって。じゃなきゃ言うよ? って」

女「……」

プロ「じゃあバラしてもいいって思うじゃん」



ポイントは3つ。
  • プロの求める見返りが小さいこと
  • 前もって「見返りを貰えなければ要求は無視する」とはっきり宣言しておくこと
  • 一度目の要求無視のときは、相手にとっての被害が少なくなるようにすること
自称Sの見返りが「俺の女になれよ」だったのに対し、プロの見返りは「晩ご飯奢って」。圧倒的にプロの見返りの方が小さいです。
宣言は自称Sも一応やってますが、プロに比べるとわかりにくい。
自称Sは「きっと変態って罵られて、友達からも避けられることになるだろうな〜」と発言していることからもわかるように、バラした際の被害の大きさを初めから強調しています。対してプロは、恐らく女のブログに引かないであろう友人を選んでバラしているわけです。一度目は。

プロは本気でバラすつもりらしい。それがわかったこの辺から、女の様子がおかしくなります。私だったら(この人になら全てを支配されてもいい)って思い始めているところです。




女「……ごめんなさい。晩ご飯奢るんで、これ以上はバラさないでくだ……」

プロ「あ、もういいよ。なんか意外とお腹すいてないし」

女「え、でも……」

プロ「喉乾いたなー。炭酸飲みたい」

女「……」




女は自販機に向かって駆けていきました。



プロ「ありがと。じゃ、△△には黙っとくな」

女「ありがとうございます(ほっ」

プロ「××(スピーカー=バレたらまずい相手)に言ったら面白そう」

女「!?」

プロ「なんて送ろうかな」

女「や、やっぱり晩ご飯奢りますよ?」

プロ「いや、それはもういいから

女「……じゃあ、どうしたら

プロ「そういえばさ、お前と長話してたせいでもう終電ないんだよね」

女「え?」

プロ「下宿だよね? 泊めてよ

女「……」

プロ「駄目なの?

女「……わかりました」




おかしいですね。
初めは「晩ご飯」という小さな代償で「全ての人に黙っている」という大きな見返りを貰える約束のはずでした。
ところがいつの間にか、「家に泊める」という大きな代償で「××にだけは黙っている」という小さな見返りを貰う約束にすり替わっています

プロは計算でやっています。が、恐らく女は気づいていません。




さて、もう一度言います。声を大にして言います。

本当にSなら有無を言わせず相手に従わせてみせろ。


以上、自分で書いておきながら上の文章のシチュエーションにドキドキしている鈴本でした。きゃー。

自分のことを理解してほしい病。

ヤンデレ以外

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自分は場の空気を悪くしてはいけないんだ、という強迫観念のようなものがあるのだと思います。

だから、シリアスな話をしているときでもその空気に耐えきれず、自らおどけて誤魔化してしまいます。相手が反応に困らないような立ち振る舞いを意識してしまうんです。

 

こんな性格なので人に相談をすること自体、苦手です。「悩みを聞いてもらうだけで少しは気が楽になるだろう」っていう俗説は、私の場合は当てはまらないと思います。
まず、前述したように、相談をしている私が相手に気を遣ってしまいます。また、相談したとしても、大抵の人は浅い答えを返してくると感じます。
私は普段から考え込んでしまう人間なので、自分がすでに思いついたことがあるような知見を答えとして返されることが多いのです。更に、一応相談に乗ってもらった身ですからどんなに身にならない回答が返ってきても相手に感謝しなければいけません。
だから、相談は苦手なのです。
 
また、自分は他人に理解してもらえない、という思い込みがあります。
実際、自分の嘘偽りない考えを言ったときに限って、よくわからないといった反応をされます。昔から変わった子だと言われますし、本当に少し変わったところのある人間なんだと思います。
たとえば、恋人には精神的に自分を支配してほしいという願望があります。自分のことを何でも理解してくれて、自分が喜ぶ言葉も傷つく言葉も大体わかっていて、それらを巧みに使うことで私の心を本当に支配してしまう。そんな恋人に愛されたいのです。
「優しくて、気遣いができて、浮気もしないし嫉妬もしない、でも自分のことだけ考えてくれて……」なんて、そんな人間が自分のことを好きだと言ったとしても、下心を疑ってしまうのです。
これはおそらく、一般的な考えではないと思います。歪んでいると言われてもおかしくはないでしょう。正直、自分でも仄暗い考えだと思います。ですが、それもまた自分の個性であり、受け入れられてもいい嗜好だとも思うのです。
ですが、周りの人の反応はそうはいきません。「DVがいいの?」と言われました。何も理解されてないな、と少し悲しくなりました。「やめておいた方がいいよ」とも言われました。そう主張するのであれば、私の価値観を根本からひっくり返すような、何か力強い言葉も添えてほしかったです。
 
思い出すと辛くなりました。
私は人とは少し違った考えをする人間なのだということを否が応でも意識してしまうからです。
どうしても、疎外感寂しさを抱いてしまいます。
 
確かに私は、普段から人の幸せな話を聞くのが好きで、相談とあらば雑にも、真剣にも答えられます。悪口以外であれば、相手の聞いてほしい話を嫌な顔せずに聞くのは得意です。それが長所だとも言われます。
でも、私の話は誰も聞いてくれない。理解してくれない。理解しようともしてくれない。
きっと聞く価値もない、くだらない話なんだ。いっそ私自身が、取るに足らないどうでもいい人間なんだ。
そんな思いが消えません。私は場の空気を乱しても許されるほどの人間ではないのだ、と思うと虚しい気持ちでいっぱいです。
 
周りが私に求めているのは、陽の部分だけで、陰の部分は別段必要でもないのかなと思います。
普通の人間であれば、陰の部分を見せてくれるのは仲が良い証拠だといって、有り難がられたりもするのですがね。私の場合は、そうはいかないみたいです。

対面人狼会でラストゲームだけ悲しい結果になるレポ

人狼
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最近、人狼ゲームにハマっています。
「スズキ」という名前で色々な対面人狼イベントに参加させていただいております。

で、なんだか毎回「この恨み、次回の人狼会で晴らさでおくべきか……」みたいな心境で帰っている気がしてならない。
思い返してみると、各会のラストゲームだけ悲しいオチに終わっていることが発覚。



11/29 人狼
私→狐

最終日4人残り。
「あなたを吊ります」と言われて、咄嗟に止めてくださいと反論できなかったことが原因で吊られる。
吊られた後、くっそおおおおって言いながら椅子ガタガタ揺らしてました。



12/20 超高校級の人狼
私→超高校級の絶望(単独陣営。勝利条件:自分が吊られること)

1日目に噛まれて死亡。グレーなのに。
GM「助かるアイテムはありますか?」
私「……ないです……(O_O)」
周りの方「本当に死にそう……」
せめて0日目の甘噛みだったらよかったのに。

ゲーム終了後
私「なんで私を噛んだんですか?」
クロ「……なんとなく?」

クロのセンサーパネェです。
占い師引くたび白圧殺になる私とは大違い



12/22-23 オールナイト人狼
私→占い師

初日占い師3CO。
狂人が対抗に白出し&私を怪しむ発言をした結果、何故か私に票が集まり、村柱&グレー&私の決選投票にまで持ち込まれる。
私「初日占い師吊りってどういうこと(混乱)狐溶かすんでお願いします」
グレーの方は役持ちCO。
結果、村柱の方が吊られる。

2日目夜に狐狙いで、役持ちCOしたグレーの方を占う。結果白。

3日目昼
GMスズキさんと(↑の方)さんの死体が発見されました
私「(息を飲む音)」

その後占いロラのタイミングを失い、人狼勝ち。

ゲーム終了後
狼1「呪殺マジで助かりました。ありがとうございます」
狼2「第二の狼陣営」
私「」

占い師としては正しいことをしたはずなのに謎の敗北感。信用とれない遺言呪殺なんてするもんじゃないですね。



王国ゲェム【ヤンデレビュー】

王国ゲェム(1)<王国ゲェム> (電撃コミックスNEXT)

王国ゲェム(1)<王国ゲェム> (電撃コミックスNEXT)




※1巻のネタバレが含まれています。



この本を買った理由は他でもありません。『危ノーマル系女子』に引き続き、表紙の女の子がヤンデレにしか見えなかったからです。
本屋で見かけた表紙に惹かれ、見本誌を立ち読みして、表紙の女の子がヤンデレであることを確信した後に買いました。



表紙の女の子=槙原紗香ちゃんは、成績優秀、容姿端麗な高嶺の花系ガールです。前回の『危ノーマル系女子』に引き続き、ヤンデレのテンプレを地でいくような素晴らしきかな女の子。



さて。
『王国ゲェム』というタイトルからも察しがつくように、主人公達が謎のゲームに参加させられるお話です。
高校生7人が巻き込まれたのは、支配と服従のデスゲーム
という帯のコピーからもわかるように、王様ゲームの命賭けたバージョンみたいなものですね。

あらすじ。主人公と紗香ちゃんを含む7人のクラスメイトが、ある日突然、「王国ゲーム」というゲームに巻き込まれてしまいます。ルールはこんな感じ。

晩0時に「王様(×1)」「貴族(×2)」「平民(×4)」が決定され、王様は貴族と平民に、貴族は平民に命令をすることができる(しなくてもいい)。命令された側は、命令する側の視界の範囲内にいる限り、不思議な力によって強制的に従わされる。
王様・貴族・平民が協力して一つの王国を為し、「領土」が一定以上になった王国には「神の手」という奇跡が与えられる。

ではこの「領土」「神の手」って何かというと……まだよくわかりません。続きに期待ですね。
とにかく、みんなで協力して自分の王国の領土を増やして奇跡を手に入れましょうって趣旨のゲームみたいです。王国は複数あって、2巻では他の王国とのバトルも展開されるらしいです。



とまあこんな感じなのですが、小難しいことは置いといて私が強調したいのは、

王様は貴族と平民に、貴族は平民に命令をすることができる。

という点、ただ一つです。


さてここで問題。
絶対服従の命令×ヤンデレ=???


……なんとなく展開を察していただけたでしょうか?

そうです。ゲーム開始二日目に女王となった紗香ちゃんが主人公に
「私のこと愛してるって言って!」
と命令するのです!!!



「私のこと愛してるって言って!」
と命令するのです!!!!!



絶対服従の命令×ヤンデレ。最っ高に萌えるじゃないですか。もうこの二つを組み合わせて物語を作ったという点だけで満点百点花丸パーフェクトを差し上げたいぐらいです。

だがしかし!!!紗香ちゃんの恋心は止まらないどころか危ない方向に加速します。

1.主人公に「私を愛して」って命令しちゃう。(でも人の心を動かす命令はできないルールだったようなのでがっかり)
2.なら体だけでもってことで主人公に「私を犯して(ハート)」的な命令をしちゃう
3.ゲームの参加者の一人である女の子がやってきても御構い無しにコトを進めようとしちゃう
4.主人公に「人にされたくないことはするな!」と言われ、(確かに他の参加者の男子に命令されて犯されるのも、主人公くんが他の女子にそういうコトさせられるのも嫌だな〜)ってことで、
私が女王になる前にみーんな殺しちゃえばいいんだ☆これで私と主人公くんだけの王国♪るんるん♪
的な思考に至っちゃう



ちょっとびっくりな展開ですね。メンヘラではなくヤンデレクラスタを自称する私としては首を傾げてしまいます。

 「みんなを殺して私と主人公くんだけの王国を作るの!」という思考は堪らなくドストライクで大好きなのですが、大事なのはその台詞単体ではなく、そこに至るまでのシチュエーションだと思うのです。
そのシチュエーションが、ヤンデレとしてはやや不十分だと感じました。
……ヤンデレとしては。

(別にこの子がヤンデレキャラとして動かされていないのであればこの項目どころか記事ごと無駄になっちゃう気がしますので、今回は紗香ちゃんがヤンデレという前提で話を進めます)


さて。彼女の思考だと、
・主人公くんが他の女とセックスするぐらいならそいつらを殺す
私が他の男とセックスするぐらいならそいつらを殺す

となりますよね。前者はわかりますが、後者は「ん?」って感じです。

主人公が言っている通り、人にされて嫌なことは自分もするべきではありません。人を呪わば穴二つ。人に嫌なことをするときは、自分も同じことをされる覚悟を持ってするべきです。でなければただの自己中です。

確かにヤンデレって自己中で独りよがりな面もありますが、それらの面は意中の人への愛という形で発露されるものです。

「好意に気付いてほしいから毎日100回電話しちゃう」
「他の女といるんじゃないかって心配だから毎日後をつけちゃう」
「好きな人の全てを知りたいから彼の自室に監視カメラを仕掛けて四六時中監視しちゃう」

行動だけ見ると本当にはた迷惑な行為なのですが、それらは全て愛する彼を想うが故なのです。だからこそヤンデレはただの自己中ではなく、可愛い萌え要素となり得るのです。


ということで、
「主人公くんが他の女とセックスするのが嫌だから、そうなる前に女を皆殺しにする」
っていうのはまだわかります。意中の人が他の女に寝取られるというのはヤンデレでなくても耐え難いことでしょう。ですので、そうなる前に他の女を殺す、という論理は理解できます。

ですが、
「私が他の男とセックスするのが嫌だから、そうなる前に男を皆殺しにする」
っていうのはわかりません。これは意中の人関係なく自分のための行動ですよね。それも、夜道でいきなり複数人の男に囲まれて今にも服を脱がされそうになったので持っていたナイフで皆殺しにした、というような正当防衛ではありません。
むしろ「私は主人公くんをレイプするけど、他の人間が私をレイプすることは許さない。だから男は全員殺す」という、かなり無茶な主張をしているわけです。

しかもまだ犯されていないどころか強姦未遂すらなく、彼らにその気があるかもわからない段階でこれはちょっと、他の男子が可哀想です。女子も然り。


こういう点を鑑みると、ヤンデレ的な萌えからは外れてるかなーって思いました。典型的なヤンデレを目指しているであろうキャラなだけに、ちょっと残念です。
あとこれはかなり個人的な意見ですが、ヤンデレなら「私の体が汚される危険があるので殺す」ではなく「体は汚れてしまったけれど、心はいつも主人公くんのものだよ(ハート)」ぐらい言ってほしいものです。
「みんなを殺して私と主人公くんだけの王国を作るの!」なんて素敵な台詞を言っちゃう系女子なのですから、もっと正統派なヤンデレでいてほしかったですね。



更に、この作品で残念な点がもう一つあります。
これはかなり大きなネタバレになるので、これから読もうと思っている方は注意してください。




















いいですか?
心の準備は大丈夫ですか?















なんで紗香ちゃん死んじゃうの(´;ω;`)?



王国ゲームにはもうひとつのルールがあり、平民達はそれを使って、女王となった紗香ちゃんを王の座から追放しました。
その結果、革命によって王が処刑されるように、紗香ちゃんは帰らぬ人となってしまったのです。


ストーリーとしては全く無理がなく、ご都合主義だとも感じませんでした。
しかし、しかしです。
この展開はちょっと、いや大分まずいんじゃないかって思いました。
唐突すぎて、これって本当に初めから作者がやりたかった展開なのかな?とすら疑ってしまいます。


というのも、紗香ちゃんは表紙を飾っています。表紙ですよ?普通マンガの1巻の表紙にいる女の子って、ヒロインじゃないですか。ヒロイン。そのマンガの看板娘。もちろん例外もありますが、少なくとも読者は表紙の女の子がヒロインであることを期待します。
物語におけるヒロインの一番の役割ってなんだと思いますか?ほとんどの場合、主人公と恋愛関係を育むことです。マンガやラノベだと特にこの傾向は強いです。

表紙の女の子がヤンデレっぽいってだけで「あ、ヤンデレなヒロインだ!これはきっとヤンデレなヒロインが平凡な主人公と愛を育むお話だな!買った!」となる読者が事実ここにいるぐらいです。


ヒロインだと期待された女の子が、1巻で死ぬ。
これがどういった意味を持つのか、関係者の方々には深く考えてほしかったなと思います。


熟考された上での判断だというのならきっと何かしらの意味があるのでしょう。しかしどうも、私にはそうは思えません。
初めはメインヒロインになる予定だった紗香ちゃんが、途中で降ろされたという印象を受けました。以下に理由を述べます。

第一に、前述した通り、紗香ちゃんが表紙を飾っています。1巻が全て描き終わる前に表紙イラストだけは出来ていた……とも考えられます。

次に、1話とそれ以外での紗香ちゃんの扱いが変わっています。1話の冒頭では紗香ちゃんが物語全体の導入を担当しています。また主人公が紗香ちゃんに言い寄られるとき、頬を赤くするなど、彼は満更でもない態度をとっています(私にはそう見えました)。
しかし1話以外では、むしろ紗香ちゃんの好意が迷惑なのだとする場面が増えてきます。紗香ちゃんが死んでしまったあとに、主人公が「実は彼女のことは苦手だった」と皆に告白するシーンもありました。

これらは、当初は紗香ちゃんが物語のヒロインになる予定だったけれど途中で変更された、という可能性があることを示唆しています。


この仮説が正しいとしたら、何故紗香ちゃんはヒロインから降ろされたのでしょうか。
理由は恐らく、ヤンデレという素材の扱いにくさにあるかと思います。

School Daysヤンデレな妹に愛されすぎて眠れないCD、ヤンデレ系のスマホアプリなどの展開を見ればわかるように、ヤンデレをメインに据えた物語は、大抵バッドエンドで終わります。
そうでなくとも、ヤンデレやそのお相手にとってはハッピーエンドでも、他人から見たら「それって本当に幸せなの?」と言いたくなるような展開が多いものです。「二人だけの世界で永遠に生きる」とか。「心中してあの世で永遠に一緒」とか。所謂メリーバッドエンドですね。

バッドエンドというのは扱いが難しくて、上手く決まれば読者の心に深く残る傑作となるのですが(ロミオとジュリエット舞姫など)失敗したら後味が悪いだけで終わります。
ヤンデレをヒロインにするだけで普通のハッピーエンドを迎えることが難しくなるという都合上、そうならなかった場合、作者は上手いバッドエンドを描くことを求められます
これが、ヤンデレが扱いにくい理由の一つ目です。

二つ目は、ストーリーのコントロールが難しくなることです。ヤンデレをメインヒロインにした場合、ストーリー展開がヤンデレの異常性に大きく引っ張られます

例を挙げます。本作がデスゲームを主軸にした作品なので、同じく極限状態の「無人島」に7人で流された話だとします。
もしメインヒロインが心優しい普通の女の子だとしたら、猛獣に襲われそうになるヒロインを主人公が助けたり、仲間が分裂しそうになるのをヒロインが仲裁したり、6人までしか乗れないイカダで主人公とヒロインのどちらかが島に残る選択をしたり……といったイベントが考えられます。王道かつドラマチックな展開を考えるのが容易ですね。
しかし、メインヒロインがヤンデレだった場合。ヤンデレというのは基本的に、自分の信念に従って自主的に行動します。猛獣に襲われそうになった主人公を逆に助けることもあれば、仲間が分裂しそうになっても主人公に被害がない限り無関心を貫くでしょう。最後に主人公かヒロインが島に残らなければならないとなれば、迷うことなく二人で心中するはずです。
迷いがないということは、葛藤がないということに繋がります。葛藤がないということは、物語の山を作りにくいということに繋がります。

よって、ドラマチックな展開を作りたいのであれば、主人公達が置かれた状況からイベントを考えるというのではなく、ヤンデレの性質に基づいてイベントを考える方が楽です。お腹が空いた主人公のためにヤンデレが仲間の一人を殺そうとするなど。

これが、ストーリーがヤンデレに引っ張られるという状況です。
言い換えると、ストーリーが常にヤンデレを中心に動くことになるのです。しかし同じ人間が同じ状況下で起こす行動のパターンは限られてきます。なので、物語が続くにつれて似たようなイベントが何度も起こるという自体になりやすい。だからヤンデレは扱いにくいのです。


メインヒロインをヤンデレにしたはいいものの、良いエンドが思いつかない。
それどころか、今後のストーリーが思いつかない。単調になりそうだ。
これからもずっとこのヤンデレを中心にした話を描いていくのは厳しそうだ。しかしヤンデレが主人公に執着するあまり仲間を皆殺しにしようとする、という展開は面白そう。ならばどうするべきか。
そうだ、殺してしまえば……



このような考えがあったのではないかと推測します。

我ながら引くほど深読みしてしまいましたが、直感的に「ヤンデレメインで描くのがめんどくさくなったのかな」と思ってしまいました。
(過去に何度もヤンデレをヒロインにした物語を書こうとして構想時点で挫折している身なので……今の私には童話の二次創作が精一杯です)



殺すという形で紗香ちゃんをメインヒロインから降ろしたのは、今後の展開を考えれば正解だったのかもしれません。
ですが、表紙と冒頭でヤンデレヒロインを期待していた読者にとっては、極端に言えば裏切りに近いと感じました。

どこかで聞いた言葉です。
読者の予想は裏切っても、期待は裏切るな
一度ヤンデレヒロインでいこうと決めたのであれば、最終巻までそれを貫き通してほしかったというのが本音です。


紗香ちゃんがいなくなってしまった今、2巻を買うかはわかりません。
ですが今後、彼女が霊的な(神的な)存在になって主人公達の前に現れるという展開があるかもしれないので、チェックはしておきたいところです。

人魚姫がヤンデレだったら【後編】

ヤンデレ童話

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 お城にやって来た人魚姫のことを、王子様は手厚く歓迎しました。彼は足の不自由な人魚姫を、妹のように可愛がりました。

 というのも、もうすぐお城でパーティーがあり、その余興の歌を人魚姫に任せたかったのです。彼女のように美しい容姿と声を兼ね備えている女性を、王子様は見たことがありませんでした。




 いつものように歌の練習をしていた人魚姫は、何気なく王子様に問いかけました。




「そういえば、いったい何をお祝いするパーティーなのですか?」

「ああ、君にはまだ言っていなかったかな。結婚を祝うパーティーだよ」




 そう言って穏やかに微笑む王子様に、人魚姫はおそるおそる尋ねました。誰が誰と結婚するのか、と。

 王子様はさらりと答えました。




「僕と、僕を助けてくれた女の人がだよ」






 いよいよ結婚式当日を迎えました。以前のように船の上で催された結婚記念のパーティーは、人魚姫の余興の成果もあり、おおいに盛り上がりました。しかし、歌を終えた人魚姫の表情は暗いものでした。




 客人と談笑している幸せそうな王子様を、人魚姫は手すりにもたれて眺めることしかできません。
 花嫁姿で幸せそうに笑う泥棒猫が、憎くて憎くてたまりませんでした。今すぐ海に落ちて人食い鮫にでも食われてしまえば良いのに、と思いました。
 

 
 そのとき、人魚姫のお姉さんたちが海面から顔を出しました。
 一番上のお姉さんは、人魚姫にナイフを差し出すと、こう言いました。
 

 
「このナイフは、魔女からもらってきたものよ。これで王子を刺して、その血を足に塗りなさい。そうしたらあなたは、また人魚に戻ることができる」
 
 

 人魚姫は黙ってナイフを受け取りました。
 
 

 夜になり、人魚姫は裸足で王子様の寝室に忍び込みました。靴音で気づかれないためです。もちろん、手にはあのナイフを持っています。
 無事に忍び込むことができた人魚姫は、迷うことなく王子様を揺り起こしました。起き上がった王子様は、傍らに人魚姫がいることに驚きました。しかし、彼女の手の中で光るものを見るやいなや、その顔はみるみるうちに青ざめていきます。
 愛らしく笑う人魚姫は、王子様にこうささやきます。
 
 

「どうしましょうか。ここで私と一緒に死ぬか、それともあの女を捨てて、私と結婚式を挙げるか」
 
 

 王子様は困惑した様子で、その意味するところを尋ねました。
 人魚姫ははっとすると、恥ずかしそうにうつむきます。
 
 

「そうでした。事情をお伝えするのを忘れておりました」
 

 
 そう呟いたあと、人魚姫は急に真剣な表情になりました。
 

 
「どうかお聞きください。私は今日、あなたを殺さなければ死んでしまう運命にあるのです。けれどあなたのいない世界で一人生きるなんて、できません。
 ですから、あなたを殺したあと、私も海に身を投げて死にます。そうすれば私たちは、天国で永遠に一緒に暮らせますからね」
 

 
 冗談みなど少しも感じさせないその言葉に、王子様は息を飲みました。人魚姫の言っていることが、全て本当のことであると確信したのです。
 
 

「でも、私だって、あなたの望まないことはしたくないのです」


 
 王子様は頷きました。確かに王子様は人魚姫を妹のように可愛がってきたけれど、だからといって一緒に死のうなどとは思えなかったのです。
 


「一つだけ。王子様を殺さないで、私も生きられる方法があります」
「本当か?」
「はい。それが、先ほど申し上げましたように、あなたと私が結婚式を挙げることなのです」
 


 王子様は頭が痛くなりました。
 


「実は私は、あなたと結ばれるために地上に生を受けたと言っても過言ではありません。だから、あなたと結婚式を挙げることができなければ、私は泡となって死んだものと同じです」
 


 人魚姫は悲痛な表情で続けます。


 
「ですから、あんな女との結婚など今すぐやめてください。あなただって本当は、望んでなんかないでしょう? 政略結婚というものですよね。そうでもなければ、あんな雌猫と結婚なんて……」
「彼女のことを悪く言うな!」
 


 人魚姫はびくり、と肩を震わせました。
 王子様はベッドから抜け出して、その脇に立ちました。握りこぶしをわなわなと震わせ、刃物のように鋭い目で人魚姫を見下ろしています。
 人魚姫は、嘘、と繰り返し呟きながら、虚ろな瞳で王子様の胸元に掴みかかりました。
 


「嘘、嘘、なんで……なんであんな女のこと庇うの!? そんなにあの女がいいの!? あのとき本当にあなたを救ったのは私なのに!!」
「あのとき……?」
「溺れていたあなたを抱きかかえながら泳いで、海岸まで運んだのは私! 目を覚ます直前までずっと隣にいたのも私! あんな泥棒猫じゃなくて、この私なのに!!」
 


 人魚姫の瞳から大粒の雫が落ちました。王子様のスカーフを掴んでいた手を離し、喉元を抑えながら苦しそうに呻きました。
 


「許さない、許さない、許さない」
 


 肩で息をする人魚姫は王子様を突き飛ばすと、走って部屋を出て行きました。
 王子様も慌ててその後を追います。廊下の突き当たりの、妻のいる部屋の扉を開けました。
 すると、人魚姫が彼女に馬乗りになって、ベッドの上でその首を締め上げているではありませんか。彼女は苦しそうに、人魚姫の体の下で、足をジタバタとさせています。
 王子様が夢中で駆け寄ろうとすると、人魚姫は彼女に向かってナイフを振り上げ、叫びました。
 


「来ないで!!」
 


 人魚姫はナイフを振り上げた体勢のまま、王子様を睨みつけます。
 


「選びなさいよ! 私と結婚するか! 私と天国で結ばれるか! ……どちらも選ばず、この女を見殺しにするか!」
 


 人魚姫の血走った瞳が、王子様を真っ正面から捉えます。王子様は、悪魔との契約を強いられているような気持ちになりました。
 と、そのとき。王子様の妻の足の動きが弱くなり、とうとう動かなくなってしまいました。かろうじて肺の動きは確認できますが、意識を失っていることは間違いなさそうです。
 王子様は、美しい少女の皮をかぶった悪魔に向かって、声を絞り出しました。
 


「わかった。僕の命を渡そう。その代わり、彼女だけは……」
「そう、なのね」
 


 マリオネットの糸が切れたようでした。彼女はナイフを持っている腕をだらんと下ろしました。もはや王子様の妻の首に当てていただけの手も、滑り落ちていきました。
 


「そんなにこの女がいいのね」
 


 抑揚のない声で呟くと、ふらりとゾンビのように立ち上がりました。かろうじてナイフを握りしめ、一歩、また一歩と、王子様に近づきます。
 王子様は妻のために、逃げようとはしませんでした。悪魔は俯いたまま、思い切りナイフを振りかぶります。王子様の胸元に深く刺さったナイフの柄を伝って、血の雫が流れ落ちました。
 人魚姫は勢いよくナイフを引き抜きました。ばしゃりと音を立てて、彼女の白いドレスに赤い飛沫が飛び散ります。彼女がナイフを床に落とすと同時に、王子様は倒れました。
 床にできた血だまりは少しずつ大きくなっていき、立ち尽くす人魚姫の足元にまで広がってきます。彼女は膝から崩れ落ちました。赤い絨毯の上に、ぺたんと座るようでした。



 しばらくしたあと、はっとして、血の染みたスカートをめくり上げて自身の足を見ました。全身から血の気が引いていきました。
 


「嘘でしょう?」


 
 足先からくるぶしにかけてが、一枚の魚のヒレの姿になっていました。内ももの辺りはぬめりけを帯びて、互いにくっ付き合おうとしています。
 人魚姫は、一番上のお姉さんの言葉を思い出しました。
 


ーーこれで王子を刺して、その血を足に塗りなさい。
ーーそうしたらあなたは、また人魚に戻ることができる。
 


「……いや、いやよ、人魚になんてなったら、私……」
 


 人魚の寿命は人間の三倍です。お姉さんの言葉が本当ならば、今となっては、魔女の呪いによって泡となって死ぬこともできません。
 


「待って……」
 


 人魚姫は這うようにして部屋を後にし、迷いなく海に飛び込みました。しかし両足の内側同士は、みるみるうちにくっついてゆきます。ウロコも足首から足の付け根に向かって生え揃ってゆき、気づいた頃には、元の人魚のヒレに戻っていました。
 彼女は焦点の定まらない瞳で、海の向こうの空を仰ぎます。しかし、月明かりもない夜なので、暗くて何も見えません。
 


 人魚に戻った人魚姫は、いつまでもいつまでも、くらげのようにその場を漂っていました。
 
 
 
 終わり

人魚姫がヤンデレだったら【前編】

ヤンデレ童話
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 深い海の奥底に、豪華なお城がありました。壁はサンゴ、窓はコハクで出来ています。
 王様には六人の美しい人魚の娘がいました。中でも末の姫は、ひときわ美しいと有名です。ただ、普通の人魚よりもほんの少し、しっと心が強いことで知られていました。



 人魚の世界では、十五歳になったら海の上の世界を見に行くことが許されています。今日は末の姫の誕生日。彼女は心をときめかせながら、海の上の世界を見に行きました。
 海面から顔を出すと、まず目に飛び込んできたのは、一隻の大きな船でした。甲板から中を覗いて見ると、たくさんの人間がパーティーをしている最中でした。
 普通の人間と比べてもほんの少しだけしっと心が強い人魚姫は、グラス片手に談笑している王子様に、恋をしてしまいました。



 人魚姫は、夜が更けるまでずっと、ずっとずっとずっとずっとずーっと、王子様のことだけを眺めていました。他の人間は、石ころに昆布の毛が生えた程度の存在にしか見えませんでした。
 会話の内容から、王子様の誕生日パーティーであることがわかりました。人魚姫は誕生日が同じであることに運命を感じました。他にも、王子様の名前と、年齢と、王子様が王子であるという事実と、お城の住所と、婚約者はいないという情報を手に入れました。残念なことに、電話番号とメールアドレスは知ることができませんでした。人魚姫は、海の魔女に頼んで彼の電話番号とメールアドレスを教えてもらおうと決意しました。



 と、そのとき。空模様が急に変わりました。突然の嵐です。船は為す術もなく横だおしになりました。
 考えるよりも先に体が動いた人魚姫は、海に落ちてしまった王子様を抱きかかえ、浜辺へと運びました。
 人魚姫は懸命に、王子様の名前を呼びます。しかし、反応はありません。彼女は夜が明けるまで、ずっと看病をしました。
 朝になり、王子様の容態が安定したのを確認すると、人魚姫は胸を撫で下ろしました。そして、乾いてしまった人魚の足ヒレを潤すために、海の中へと戻りました。
 人魚姫は海の中から、まだ眠っている王子様の様子を遠目に見張っていました。すると浜辺に、一人の娘がやって来ます。彼女は倒れている王子様を見て驚くと、すぐに人を呼びにいきました。
 娘が人を連れて戻ってくると、王子様が目を覚ましました。なんとか起き上がった王子様は、娘を見て微笑みました。



「ありがとう。僕を助けてくれて」



 心臓がずくり、と痛みました。娘は戸惑いながらも、はっきりと否定するようなことは言いません。王子様は「お礼がしたいから」と言うと、娘の手を取り、お城に連れて行きました。
 人魚姫はその様子を、呆然と眺めていることしかできませんでした。






 海に帰った人魚姫は、城にも帰らず、海の魔女が住んでいる洞窟に行きました。



「失礼します」



 サンゴの杖でるつぼの中身をかき回している魔女は、人魚姫の声を聞いてニヤリと笑いました。



「おやおや、妬きもちやきのお姫様じゃないかい。今度は何と引き換えに、誰の住所が欲しいんだい」
「……住所はいらないわ。それよりも、頼みたいことがあるの」
「ほう。電話番号かい? メールアドレスかい?」
「私を人間にしてほしいの」



 魔女は手を止め、おもむろに振り返りました。



「今度は人間の男かい。まあいい。人間の足をやることはできるが、代償は大きいぞ。今回ばかりは、お前さんの爪一本や二本じゃあ済まない」



 人魚姫の手には、一本足りとも爪が残っていませんでした。それがあったであろう場所には、赤黒い大きなかさぶたが出来ているだけです。
 彼女は黙って魔女の話に耳を傾けました。



「そうだねぇ、お前さんの声を貰おうか。その声は美しいと評判だからね」
「いや! それだけは絶対にいや!」



 人魚姫は魔女を睨みつけながら、王子様の言葉を思い出します。娘をお城に連れて行く途中、ぴたりと足を止め、「あれ、でも声が違うような」と呟いたのです。意識を失っている間に自分の名を呼んでくれていた声を、彼は覚えていたのでした。それでも王子様は「ごめんなさい。気のせいですよね」と歩き出してしまいましたが。



 人魚姫の真剣な眼差しを受けて、魔女は大きくかぶりを振りました。



「わかった、わかったよ。お前さんは頑固なことでも有名だからね。じゃあ、こうしよう。人間の足をやる代わりに、お前さんの『幸せな未来』を貰う」
「幸せな未来?」
「そうだ。幸せな未来を奪われたお前さんは、これから先、どんなに足掻いても幸せにはなれない。待ち受けているのは不幸な未来だけ。どうだい?」
「わかったわ」



 即答でした。驚く魔女を尻目に、人魚姫は思います。魔女が与える不幸など、このまま彼に会えない未来に比べたら安いものだと。



 こうして人魚姫は人間の足を手に入れました。魔法をかける前に言われた通り、足は歩くたびにガラスの破片を踏むように痛みます。ですが、人魚姫はそれを苦には思いませんでした。





 つづく